理学療法士にコミュニケーション能力は必要?

理学療法士養成校のオリエンテーションなどで、理学療法士に向いているのはどんな人か、理学療法士に必要なものは何か、という話になった際に必ず出てくるものが、このコミュニケーション能力です。

理学療法士にとって、このコミュニケーション能力が非常に重要なものであることは言うまでもありません。

しかし、理学療法士になるかどうか迷っている学生が、このコミュニケーション能力のあるなしで理学療法士になることを諦めてしまうのは本当にもったいないことだと思います。

なぜなら、日常会話のような一般的なコミュニケーション理学療法士に求められるコミュニケーションは違うからです。

この記事では、理学療法士に求められるコミュニケーション能力とその習得方法について徹底的に解説していきます!

コミュニケーション能力が高い人

患者さんとのコミュニケーションは、理学療法士を目指す学生が実習で最初にぶち当たる壁の一つです。

会話がぎこちなかったり、沈黙が続いたり…最終的には患者さんの方が気を使って話しかけてくれるという光景をよく見かけます。

でも、実習前にその学生が作成したプロフィールを見てみると、「長所:コミュニケーション能力が高い」、と書いてあったりします。

恐らく、友達や学校の先生とは上手にコミュニケーションを取ることができるのでしょう。

つまり、始めから患者さんと上手にコミュニケーションを図れる学生はいないということです。

自分はコミュ力が高い方だと思っていても、いざ高齢の患者さんを前にすると緊張も相まって何をしゃべったらよいか分からなくなってしまうというわけです。

残念ながら、これに対する解決策は特にありません。バイザー(実習指導者)から学ぶようにと学校の先生からは言われるかもしれませんが、そもそも治療者と実習生では立場も全く違うためあまり参考にはならないでしょう。

ですが、自分が理学療法士として臨床に立った時のために、バイザーが患者さんとどのようにコミュニケーションを取っているか、しっかり見ておきましょう。

理学療法士に求められるコミュニケーション能力

では、理学療法士に求められるコミュニケーション能力とは何でしょうか?

まず第一に必要となるのは、患者さんから情報を聞き出す能力、いわゆる問診力です。

でも、ただ聞き出せば良いというわけではありません。

これから、コミュニケーション能力の高い理学療法士とそうでない理学療法士の違いについて、患者さんとのやり取りを例に説明していきます。

 

 療法士:「いつから背中が痛いんですか?」

 患者様:「1週間前からです。」

 療法士:「何かきっかけがあったんですか?」

 患者様:「実は、庭の草取りを2時間以上やってしまって…」

 

ここから先、コミュニケーション能力の高い理学療法士とそうでない療法士がどのように会話を展開させるか、それぞれの会話の続きを見てみましょう。まずは、コミュ力の低い療法士の場合です。

 

[コミュニケーション能力の低い理学療法士の場合]

 患者様:「実は、庭の草取りを2時間以上やってしまって…」

 療法士:「そうですか。1週間前と比べて痛みはどうですか?」

 患者様:「あまり変わらないですね。」

 療法士:「なるほど。どんな痛みですか?」

 

この先も療法士の質問が延々と続きます。確かにどれも治療するうえで必要な質問ではありますが、患者さんが受ける印象は取り調べのような無機質なものです。では、コミュ力の高い療法士の例を見てみましょう。

 

[コミュニケーション能力の高い理学療法士の場合]

 患者様:「実は、庭の草取りを2時間以上やってしまって…」

 療法士:「2時間も?ずいぶん頑張りましたね。」

 患者様:「一度始めると止められなくなっちゃって笑」

 療法士:「この時期はすごいですよね。やってる時は何ともなかったんですか?」

 患者様:「もう夢中になってたので…」

 

このように、コミュ力の高い療法士は問診をしながらでも患者さんとすぐに打ち解けていきます。

また、コミュ力の高い療法士は痛みの原因を探るのと同じくらい患者さんの性格を把握することも大切にします。それは、治療経過を大きく左右するものだからです。

一番大事なのは患者さんのタイプを知り、それに合った接し方をすることです。それができるのが、コミュニケーション能力の高い理学療法士というわけです。

理学療法士は話上手?

患者さんの中には、おしゃべりなしで治療だけに専念してほしいと思っている方もいらっしゃいます。逆に、あまり良くはありませんが、おしゃべりするために来る方もいらっしゃいます。

そこをしっかり見極めることが重要です。

私は口下手な人よりも話し好きな人の方が理学療法士に向いている、とは思いません。

自分が行った勉強会の話や自分の趣味の話をしたり、うんちくや雑学を延々と語る療法士は、往々にして嫌われるからです。

もちろん、そういう話を聞くのが好きという患者さんもいらっしゃいます。

ですが、理学療法士に求められているのは自分がしゃべることよりも聞き出す能力です。聞き上手であることです。

コミュニケーション能力を上げるには?

多くの療法士は、経験的にそうしたスキルを習得していると思われますが、今から何かできることがあれば実践したいという方のためにいくつか方法をご紹介したいと思います。

① いろんなタイプの人と話す

仲の良い友達と話していても、コミュニケーションスキルは上がりません。いろんなタイプの人と話すようにしましょう。あまりしゃべったことのない人や、自分と年の離れた人、また、自分との共通点が少なそうな人を見つけて積極的に話しかけましょう。緊張して何を話したらいいか分からないという人は、たくさんしゃべってくれそうな人に声を掛けましょう。相手のトークスキルを真似することから始めるのもいいかもしれません。

② 相手の関心事を探る

話題を振っても話がすぐに終わってしまうということがありますか?もしかすると相手にとって、あまり興味のない話題なのかもしれません。人は誰しも、関心のある話題には食いつくものです。ですが、その関心事を会話しながら最短ルートで見つけるにはそれなりの技術が必要です。外見や世代などから、相手が興味を持ちそうな話題を予測して、話を振ってみましょう。相手がいっぱいしゃべってくれるようになれば成功です。しかし、相手の関心事が分かっても自分がその話についていけなければ元も子もありません。日頃から、ニュース、スポーツ、食など、いろんなものに興味を持って、どんな話題にもついていけるようにしましょう。

③ 答えを予想して質問する

さらにコミュニケーション能力を上げたいという方は、相手の答えを予想しながら質問してみましょう。相手をよく観察していると、この人は末っ子っぽいとか、野球をやってそうとか、ゲームが好きそうといったことが感覚的に分かるようになっていきます。最初は直感的なものかもしれません。でも、いろんな人に質問していくうちにその精度は上がっていきます。経験の多い理学療法士ほど、その能力が優れています。例えば、この人は完璧に治るまで満足しなさそうとか、この人はクレームが多そう、といったことをぱっと見ただけで感じ取ります。もちろん、先入観を持ち過ぎることはあまりよくありませんが、治療を円滑に進めていくうえでは必要不可欠なスキルと考えます。早いうちからそういう訓練をしてみるのもいいかもしれません。

この3つを今から実践していれば、理学療法士になった際、患者さんと上手にコミュニケーションを図ることができるでしょう。

なぜなら、この3つは多くの理学療法士が現場で実践していることだからです。

理学療法士を目指す学生の皆さん、最初から患者さんと上手にコミュニケーションを図れる理学療法士なんていません。みんなゼロからのスタートです。

なので、自分は人としゃべるのが苦手だから理学療法士にはなれない、とは思わないでください!